平成25年10月30日(水)に開催致しました「第17回交通大学」にて、
受講者の皆様から頂きました先生方への質問の回答を掲載いたします。
※一部回答できていない質問がありますがご了承下さい。
※野中先生の回答につきましては、後日アップする予定です。
質問1 | ||
航空機が 離陸から着陸までの動きで 飛行場完成(タワー)と航空路完成(コントロール)の担当領域はおおむね、どのあたりまでなのか。 鉄道のニュースで ATSやATCと聞くが ATSは本日の講演で理解できましたが、ATCについて教えて下さい。 |
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回答. ・担当領域について 飛行場管制(俗にタワー)の領域は、半径9キロ、高度24,000ftの円筒の範囲です。地域の特性からぴったりこの通りではありません。 飛行場と飛行場の間を管制するのは、航空路管制と言い、全国を4分割しています。 札幌管制区、東京管制区、福岡管制区、那覇管制区です。 ・ATCについて 席上で申しましたがATSのみでATCは間違いです。 |
質問2 | ||
ニアミス、福知山と 事故の主な原因は垣本先生はどう考察されますか? | ||
回答. ニアミスの原因及び福知山線事故の原因及び背後要因について、講演の中で述べておりますが、公表されている事故調査報告書には以下(※1)の様に述べられております。 事故調査委員会委員として本調査に関った者として、調査報告書(2002-5) 「第4章 原因」に述べられていることに同意し、講演でもその様に述べたつもりです。 なお、公表されている全ての事故調査報告書は、インターネット上で閲覧することが出来ます。 ※1 こちらのページに掲載しています。 |
質問3 | ||
ヒューマンエラーの中でも防ぐ事が難しい動静不注視を起こしうるヒューマンファクターを解説頂ければ助かります。 | ||
回答. 定義 ヒューマンファクターとは、機械やシステムを安全に、しかも有効に機能させるために必要とされる人間の能力や限界、特性等に関する知識や、 概念、手法等の総称である。(日本ヒューマンファクター研究所) ヒューマンファクターに含まれる内容は「人間に関する全ての事」と言われるぐらい幅が広い。 マン・マシンシステムの中で働く人々を対象に、いかにしたらパフォーマンスを最適化することが出来るか、いかにしたらヒューマンエラーを低減することができるかを目指している。 そのためには、行動科学、社会学、各種工学、生理学、交通輸送マネジメント等の方法や知見を適切に組み入れることが必要になる。 不適切なデザイン、不適切なトレーニング、不適切なチームまたは、グループマネジメント等は組織全体のパフォーマンスを低下させることになる。 (注:パフォーマンス(performance) 、作業や仕事を行った結果をいう) |
質問4 | ||
注意についての説明をもう少し詳しく聞きたい。 |
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回答. 動静不注視についても、講演の中で述べた注意の特性が関連し動静の中でも同じである。当然のことながら望ましい状態の注意レベルを長時間維持することはできない。 ここぞと思う場所で、「見よう」という意識を働かせた時注意はよく働く。しかしその状態に慣れれば、リラックス状態になる。 通常であれば、リラックスクリアで十分。状態的に危険な場所は分かっていると思うので、[ここはリスクが高い]というように意識が働けば注意は高められる。 この緊張と弛緩がリズムとしての注意の特徴です。 注意について管理の時間を割いたので、ここでは省略します。 |
質問1 | ||
自転車の転倒防止対策の中に 目線を5~10cmに置くとありました。 その際の 何か物を置く等をして目線をそこへむけて実験 例のお話がありましたが、もう一度 そのくわしい方法を教えて頂きたい。 |
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回答. 1.体験者が立つ位置を床に印(ア)を付けます 2.体験者が立つ位置から直線で1メートル離れた位置と3メートル離れた位置の床にそれぞれ印(イ)と(ウ)を付けます。 3.体験者が指定された位置(ア)に立ち、1メートル離れた印(イ)に目線を置きます。 4.(イ)からボールを真横に少しずつ移動させ、体験者がボールの見えなくなったときに合図をしてもらい、その箇所でボールの移動を止めます。 5.(ウ)からボールを真横に少しずつ移動させ、体験者がボールの見えなくなったときに合図をしてもらい、その箇所でボールの移動を止めます。 6.1メートルの位置に目線を置いたときと、3メートルの位置に目線を置いたときの、止めたボールの位置を確認します。 3メートルの位置に目線を置いたときの方がボールの位置が(ウ)から離れていることを指摘して、目線を少しでも先に置いた方が 広い範囲を見ることができることを説明します。 |
質問2 | ||
・P19の「思い込み運転による死亡事故例」のスライドですが、原因として 「女性は よく通る道で、車の交通量が非常に少ない交差点という思いこみ」となってますが、その原因を 女性が意識不明のまま死亡となっているのですが、 どうやって断定されたのかを知りたいです。一時的に意識があって聞かれたのでしょうか? または推定なのでしょうか? ・全体的に上記のような、その対象者の気持ちや原因を断定されている、信頼性や妥当性を証明するデータが知りたいと思います。 |
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回答. 警察からの調査結果が雇用契約している財団に報告され、その報告内容には事実である部分と推定した部分が有ります。 この報告書から私が、刑罰や保険金支払いのための事故責任割合を決めるわけでもありません。あくまでも事故防止の観点から、 日常の自転車利用の中に事故発生の危険性が潜んでいることを喚起させるためのものです。したがって信頼性が100%ではありません。 |
質問3 | ||
自転車利用者に対する交通安全教育は誰が行うべきであるとお考えですか? 各年代層別など区分して頂いても結構です。 御教示をお願いします。 |
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回答. 交通安全教育の主催者は警察・自治体・学校・自転車関係団体・町内会・PTA・公共施設・NPO・自動車教習所等、営利目的でなければどこでもよいと思います。また、指導者も安全教育に熟知されている方なら、どなたでもよいと思います。 開催に当たっての課題はどうすればすべての年代の人に参加してもらえるかです。特に事故当事者が東京では20歳代と30歳代が最も多いのですが、これらの年代を含めた成人が参加する機会を増加させるためには、生活環境並びに講習内容を考慮する必要があります。 [参加者の増加対策] 参加者増加対策として1.強制(受講しなければならない)2.優遇制(受講するとメリットが得られる)3.受講しやすい環境の利用(公共施設の活用・時間帯)があります。 1は中学・高校・大学在籍者、仕事として自転車利用者の多い企業が対象です。受講しなければ通学、仕事に利用できないとします (7月1日から施行された東京都の「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」では自転車を事業に用いる事業者に対して研修・指導を実施する努力義務が課せられています)。 特に中学・高校・大学在籍者には強制力を持たせることは容易であると考えられます。 2の実例として、公営駐輪場利用者決定抽選で当選確率の引き上げ、自転車の修理や保険の料金割引等があり、受講者数増加に寄与しています。この他、商店と連携して割引券を配布する等が考えられます。 3は参加対象者として公民館等の公共施設を利用している団体や来館者、学校で開催される保護者会の出席者、開催時間として夜間や休日等を考慮した方法もあります。 |
質問4 | ||
大変参考になる講演ありがとうございました。 写真を使っての説明が大切であることがよく分かりました。 今回使用した写真は どのように タイミングで撮ったのでしょうか? (偶然か 演出か) |
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回答. 講習会で使う画像はすべて現地を歩いて回り、撮影したものです。 ヒヤリハットの画像等に演出は全くありません。偶然ともいえますが、1日歩くと、何回もヒヤリハットの現場に遭遇します。このことは危険性が発生しやすい道路環境が多くあるという結果の裏返しと考えていただいたらよいと思います。 |
質問5 | ||
1.高齢者の方に 知らないルールを教えるという取り組みが大切と考えます。 一連の取り組みの中で、受講生の皆様が最も納得させるのが難しいシーンと それをどう説明されるのか 事例があれば ご紹介ください。 2.思い込みを減らす最大の要因は? |
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回答. 1. 高齢者の方々は交通ルールを順守する姿勢が他の年代より高いというデータが有ります。また、これまで事故を起こさなかったから大丈夫という自尊心も高いのが特徴です。 したがって改めて交通ルールを教えても、それが身に付いて、安全意識が高まるという可能性は高いとはいえないと思います。 高齢者の事故の特徴は、運転技術の低下による転倒事故が全体の6割もあるということです。したがって、この転倒防止対策の中に交通ルールも盛り込む方法を実施しています。 例えば、横断歩道では通行する歩行者がいないときを除いて、降りて自転車を押し進むのが正しい交通ルールです。私が行っている安全教室では、他の自転車や歩行者と交錯するとき、 ハンドル操作が確実に行うことが出来なくてバランスを崩して転倒し、隣にいた歩行者や自転車を事故に巻き込む危険性があるので、降りて押しながら周囲を確認して進むように勧めています。 この方法では、改めて交通ルールを教えるというよりも、危険回避のための方法を教えるということになります。高齢者に対しては、こうした方法が最も効果があると考えています。 2.思い込み運転を防止する方法 思い込み運転で事故を起こしてしまった人の体験談を披露してもらうことです。 これが難しいときは、自動車に付けられているドライブレコーダーの画像を借用して放映することです。思い込み運転がいかに危険な行為であるかが実感するでしょう。 |
質問1 | ||
車の運転において適切な目線の移動は非常に重要ですが、個人差があるように感じます。効果的なトレーニング方法等はありますでしょうか。 | ||
回答. 実スケールで再現されたドライブシミュレータ等で事故が発生しやすい状況を自ら体験して,危険な状況や失敗から学び取る経験が最も重要と考えます. |
質問2 | ||
歩行者シュミレータは視覚だけの車の再現なのでしょうか。(音や風などは再現されるのでしょうか?) | ||
回答. 視覚情報に聴覚情報を組み合わせて交通環境を再現しています. |
質問3 | ||
・ななめ横断の危険性についてどう思われますか? ・車の大きさと速度感の違いについては差がありましたか?(例:大型車での事故は少ないが、小型車との事故は多いなど) |
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回答. 車道の斜め横断は通常の横断に比べ,横断時間が増加し,死角も増加するため,交通事故に遭いやすい,より危険な状況にあると考えます. 大型車と小型車での比較実験は実施しておりませんが,車両色が暗いと歩行者が車両に気付くのが遅れるケースがあることを確認しています. |
質問4 | ||
人が危ないと感じる距離とその背景が解明されていれば教えて下さい。 | ||
回答. 現在,交通科学協議会に投稿中の内容ですので,準備ができ次第,以下のHPで公開します. http://mit.ie.akita-u.ac.jp |
質問5 | ||
なぜ高齢者になると車間距離の広狭把握が苦手になるのか? 高齢になると速度を読み取る能力は、若年者にくらべ かなり低くなるのか? |
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回答. 車間距離の広狭把握能力の低下には知覚認知能力の低下に加え,高齢歩行者に特有の行動も背景にあると考えます. また,過去に研究室で実施した光点の接近速度の弁別検査では,若年者と全く変わらない弁別能力を有する高齢者が存在する一方, 検査に参加した1/4の高齢者は時速60km/hと45km/hを弁別できないことを明らかにしました.加齢により速度認知能力が低下するわけでは無く,加齢に伴い個人差が増大すると捉えた方が適切に思います. |
質問6 | ||
高齢歩行者の事故と性別について知りたい。 女性が事故にあいやすいと思うのだが。 |
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回答. 歩行者事故発生率の男女差については現在調査中です... 女性の高齢歩行者の交通事故が目立つのは,65歳以上の高齢女性が男性の約1.3倍と多いことと,買い物等で外出の機会が多いことも一因ではないかと考えます. |
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